クリニックの経費はどうなる?インボイス制度の影響と実務対応ガイド(2025年対応)

クリニックの経費はどうなる?インボイス制度の影響と実務対応ガイド(2025年対応)

はじめに

こんにちは。税理士の桜井晃規です。

インボイス制度が始まり、取引先にインボイス(適格請求書)発行事業者であることを求める場面が増えてきました。
一方、クリニックは非課税売上(保険診療)が大半を占める特殊な業態であり、一般企業とは異なる対応が求められます。

インボイス対応に関しては、秋田・青森県内のクリニック様から多くご相談・ご質問も受けているところです。
この記事では、インボイス制度について、クリニックの経費処理にどのように影響するのか、課税区分ごとの対応も含めて解説します。

インボイス制度と仕入税額控除の基本

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が必要になる制度です。
仕入税額控除とは、売上にかかる消費税から、仕入や経費にかかった消費税を差し引いて納税額を軽減する仕組みです。

インボイスがない=仕入税額控除ができない → 実際に納める消費税が高くなるという構造であるため、インボイスの有無は消費税の納税額に直結します。

クリニックの課税売上・非課税売上とは?

クリニックにおける売上は大きく以下の2つに分かれます:

  • 保険診療報酬:非課税売上
  • 自費診療・健診、予防接種・美容施術・物販など:課税売上

このうち、基本的には保険診療報酬が大半を占めるため、課税売上が少なく、消費税の納税額が発生しにくい構造になっています。

クリニックのインボイス制度対応:3つのケース

1. 免税事業者のクリニック(課税売上が1,000万円以下)

  • 消費税の申告・納税義務がありません。
  • インボイス制度の影響も原則ありません(仕入税額控除の適用がないため)。
  • 実務上は、「経費にインボイスがあるかどうか」を気にする必要はありません。

2. 簡易課税制度を適用しているクリニック

  • 課税売上が5,000万円以下で、簡易課税を選択している場合。
  • 経費の実額ではなく、「売上に対して一定割合(みなし仕入率)」で控除を計算する方式。
  • インボイスの有無に関係なく、仕入税額控除は一律に計算されるため、インボイス制度の影響はありません。

→ 免税事業者・簡易課税事業者の実務対応は共通しており、「特別なインボイス対応は不要」です。

3. 原則課税のクリニック

  • 課税売上が5,000万円超であれば原則課税となります。 → 美容外科など、自費診療が多い一部の診療科に限定されます。
  • インボイスのある経費だけが仕入税額控除の対象になります。

現行の特例措置(経過措置)

現在は、インボイスがない場合でも、次の割合で仕入税額控除が認められています:

  • 2023年10月~2026年9月:80%控除可能
  • 2026年10月~2029年9月:50%控除可能
  • 2029年10月以降:控除不可

→ 原則課税のクリニックは、今のうちからインボイス対応を進めておくことが望まれます。

インボイスが出てこない可能性のある経費とは?

通常インボイス対応されている経費

  • 医薬品・医療材料の仕入れ(大手卸)
  • 電気・水道・ガス(公共料金)
  • 複合機・医療機器のリース

注意が必要な経費

  • 清掃などを個人に委託している場合
  • 家賃を個人の家主に支払っている場合
  • ホームページ制作やコンサルなどの個人業者

これらはインボイス登録をしていない可能性があり、原則課税の場合は将来的に控除が制限されることになります。

「インボイス番号の有無」を見分けるポイント

  • 請求書や領収書に「登録番号(T+13桁)」が記載されているかを確認
  • 未登録の事業者は、年商1,000万円以下の免税事業者であることが多い
  • 相手が法人の場合は、国税庁の公表サイトで確認も可能です

まとめ|自院の課税区分を踏まえて対応を

インボイス制度の影響は、クリニックの規模や課税区分によって異なります。

  • 免税事業者・簡易課税のクリニック → 対応不要
  • 原則課税のクリニック → 経費のインボイス対応が重要

大多数のクリニックについては、実務上は対応が必要ないケースがほとんどです。
制度の理解を深め、今後の経理対応や取引先の見直しに備えていきましょう。

当事務所では、制度に関するご相談や実務対応のアドバイスも承っております。
「自院も対応が必要か?」など、ご不明点があればお気軽にご相談ください。

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