はじめに
こんにちは、税理士の桜井晃規です。
開業を検討する勤務医の先生にとって、「新規開業」と「承継開業」のどちらが良いかは大きな選択です。
現在は、後継者不在により売却を希望するクリニックが増えており、第三者による「承継開業」は、選択肢として現実味を帯びています。
本記事では、特に第三者承継を中心に、新規開業との比較、費用感、判断ポイントについてわかりやすく解説していきます。
1. 開業のスタイルは大きく分けて2つ
クリニックの開業には大きく分けて以下の2つの方法があります。
- ゼロから設備や物件を準備する「新規開業」
- 既存のクリニックを引き継ぐ「承継開業」
特に承継開業には「親族内承継」と「第三者承継」があります。
親族内承継は、家族に既にクリニックを経営している人がいる場合に選択される方法で、不動産や医療法人の持分といった財産の承継が関係してくるケースが多くなります。
一方、近年増えているのが、親族関係のない医師同士で行う「第三者承継」です。
後継者のいないクリニックを、第三者が診療ごと引き継いで開業するもので、特に地方では非常にニーズが高まっています。
本稿では、第三者承継を中心に、新規開業との比較を紹介していきます。
2. 新規開業と承継開業の比較(一覧表)
比較項目 | 新規開業 | 承継開業(第三者) |
初期投資 | 5,000万〜2億円 (テナント or 建物新築) | 2,000万〜4,000万円程度 |
経営安定までの期間 | 平均2〜3年必要 | 引継ぎ直後から黒字化も可能 |
自由度 | 診療スタイル・設備設計の自由度高 | 限定的(リフォームや方針変更に制約) |
患者基盤 | ゼロから獲得 | 既存患者を引き継げる |
スタッフ採用 | 新規採用から教育が必要 | 既存スタッフがそのまま働くことも可 |
3. 承継開業のメリット・デメリット
メリット
- 初期投資を抑えられる
- 開業直後から安定した収入が見込める
- 医療機器やレセプトシステムなどが整っている
- 地域に根付いた患者層をそのまま引き継げる
- 経験豊富なスタッフが在籍している可能性あり
デメリット
- 診療スタイルや設備に自由度が少ない
- 設備の老朽化、修繕費のリスク
- 経営状況や評判などの引継ぎリスク
- 人間関係やスタッフとの相性問題がある可能性
4. 承継開業の費用感と「のれん代」
第三者承継で発生する初期投資額は、一般的に2,000万〜4,000万円程度とされています。
この金額には、クリニックの不動産(土地・建物)や医療機器、内装設備といった有形資産の譲渡価格に加え、「のれん代(営業権)」が含まれることもあります。
のれん代とは、既存の患者基盤や診療実績、立地の良さ、地域での認知度など、目に見えない資産的価値に対して支払う対価です。
とくに承継元のレセプト件数や売上金額は、承継後すぐに収入が見込める根拠となるため、譲渡価格の中で一定の評価を受けることがあります。一般的には、承継元クリニックの年間利益や売上等を参考に、のれん代を含む譲渡価格が交渉されます。
経営がすでに安定しているクリニックを引き継げるという点は、新規開業と比較して大きなメリットです。
初期投資は発生するものの、開業後すぐに売上が立ちやすく、黒字化までの期間も短いため、のれん代の支払いも経営的に合理的な判断となるケースが少なくありません。
5. 承継開業の進め方と注意点(簡易版)
- 現地見学・診療体制や財務状況などの確認 ⇒ 承継前から一定期間、実際に勤務していただくのがおすすめ。
- 譲渡条件(価格・引継内容など)のすり合わせ ⇒ 譲渡価格の算定については、医療機関に精通した税理士などの専門家に依頼することが重要。
- 医療法人(持分)であれば持分譲渡契約、個人であれば事業譲渡契約の締結
- 保健所等への手続き ⇒ 患者カルテの引継ぎ及びレセプト請求番号のスムーズな取得が特に重要。
また、承継後にリニューアル(内装変更や診療時間の変更)を検討するケースも多く、事前に柔軟性があるかを確認することが重要です。
6. まとめ|勤務医の先生が選ぶべき道は?
それぞれの開業スタイルには、費用・自由度・経営安定性といった面で異なる特徴があります。
承継開業は、患者・人材・設備を集める時間を買うことができることが最大のメリットといえます。
- 初期投資額をなるべく抑えたい方
- すぐに安定した診療を始めたい方
→ 第三者承継は有効な選択肢です。
一方で、診療スタイルや地域選定に強いこだわりがある場合は、新規開業も十分選択肢になります。
当事務所では秋田・青森を中心にクリニックの承継・開業支援を行っています。
当事務所は、新規開業・承継開業の両面において、多くの医療機関様をサポートしてまいりました。
譲渡価格の算定、事業譲渡契約書のチェック、事業計画の作成、金融機関交渉サポートまでワンストップで支援可能です。
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