はじめに
こんにちは、税理士の桜井晃規です。
近年の物価高騰により、光熱費や医療用消耗品などのコストが増加し、クリニックの経営にも大きな影響が出ています。
そうした状況に対応するため、【福祉医療機構(WAM)】では「物価高騰対応資金」の融資制度が開始されました(令和7年4月〜)。
本制度は、経営悪化に直面する医療機関に対して、優遇条件での資金調達を可能とするものです。
特に、以下のようなクリニックにとって有効です:
- 電気代やガス代、医療材料費などの経費が大幅に増加している
- コロナ融資の返済が始まり、資金繰りが厳しくなっている
- ベースアップ評価料を算定している
制度の目的
物価高騰の影響で費用が増えたことにより、一時的に資金繰りが悪化している医療機関に対して、通常よりも有利な条件で【経営資金(長期運転資金)】を融資する制度です。
融資の対象となる条件
A:ベースアップ評価料を届出している場合
- 直近の月次試算表で、前年や前々年と比較して「経常利益が減少」している
- 経営改善計画書の提出が必須(2年間の進捗報告あり)
- 直近1年以内で、物価高騰の影響が出ている月の試算表を比較 → 経常利益の減少 + 事業費用(医業費用など)の増加
- 経営改善計画書の提出は不要
- 直近の売上2ヶ月分(4,000万円を限度)を無担保で借入できます。
- 2年間据え置き(元金返済なし)かつ無利子です。
- 経営状況の確認(試算表などの準備)
- 申込書・経営改善計画書の作成
- WAMへの申請
- 書類審査(内容によって1〜2ヶ月要することも)
- 融資決定・実行
- コロナ融資の返済が始まり、資金が不足している。
- 医業費用が増加しており、利益が圧迫されている。
- ベースアップ評価料の届出をしている。
- 顧問税理士が制度に詳しくない
- 返済資金の見通しが立たない
- 書類作成を手伝ってほしい
B:ベースアップ評価料の届出なしの場合
クリニックにおける融資条件(医療貸付)
ベースアップ評価料を届出している場合(概要)
項目 | 内容 |
借入限度額 | 直近売上の2ヶ月分(最大4,000万円) |
担保 | 無担保 |
償還期間 | 10年 |
据置期間 | 最大2年間(病床返還計画提出で最大5年間) |
利率(据置後) | 当初2年間⇒無利子 2年経過後⇒年1.5%(令和7年6月現在) |
ベースアップ評価料を届出している場合には、
非常に好条件での借り入れが可能です。
借入の詳細条件は、下記リンクをご覧ください。
【独立行政法人福祉医療機構 物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金のごあんない】
https://www.wam.go.jp/hp/rising_prices_00/
コロナ融資の返済中のクリニックに朗報
令和2〜3年に実施されたWAMの「コロナ特例融資」は、多くの医療機関が利用し、最大5年間の据置期間を活用してきました。
現在はその返済が始まり、資金繰りに悩むクリニックも増えています。
この「物価高騰対応資金」は、他行の借換えには使えませんが、WAM自身のコロナ融資の借換えには使用可能です。
これにより、実質的に据置期間を延長できるため、月々の返済額を軽減し、資金繰りを安定させることが可能です。
※この点はWAM公式のQ&Aにも明記されています。
利用までの流れ(簡易チャート)
なお、経営改善計画については、決算書や試算表等の数値を基に作り上げていく必要があるため、税理士などの専門家の支援があるとスムーズです。
まとめ
物価上昇により厳しい状況が続くなか、WAMの物価高騰対応資金は、経営再建に向けた資金繰りを下支えする貴重な手段です。
特に、
といった医療機関にとっては、早期の活用が鍵になります。
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WAM融資の利用可否や必要書類の整理、経営改善計画書の作成支援を行っています。
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